親や家族の介護が必要になったとき、ほぼ全員が悩むのが「在宅で続けるべき?施設に入るべき?」問題です。

結論から言うと、答えは1つではありません。本人の状態家族の介護力地域のサービス状況で、最適解が変わります。

この記事では、介護保険制度の基本ルールに沿って、在宅と施設の違い・費用の考え方・判断基準をわかりやすく整理します。


✅30秒でわかる要約

  • 在宅は「介護保険の限度額内なら負担は抑えやすい」けど、限度額超え・保険外費用で増えやすい
  • 施設は「介護保険+居住費+食費」で構造的に高くなりやすいが、負担限度額認定で差がつく
  • 特養(介護老人福祉施設)は原則要介護3以上(要介護1・2でも特例入所の枠あり)
  • 迷ったら、まず地域包括支援センターに相談(状況整理と選択肢の提示が早い)

迷ったらこれだけ:YES/NO 3問フロー

「在宅 or 施設」を決め打ちする前に、まずこの3問で方向性を絞るとラクになります。

  1. 家族の介護がすでに限界(睡眠不足・仕事に支障・夜間対応が無理)ですか?
    YES: 最短ルート(相談先)へ。施設も含めて“今すぐ回る体制”を作るのが先。
    NO: 次へ
  2. 本人が「自宅で暮らしたい」意思が強く、転倒や徘徊などの安全面を整えられそうですか?
    YES: まずは在宅の組み立てへ
    NO: 次へ
  3. 要介護3以上、または24時間の見守りが必要(認知症の進行・夜間不穏・転倒リスクが高い)ですか?
    YES: 施設を本格検討
    NO: “在宅+ショート”など併用で回るか検証

ポイント:このフローは「決定」ではなく「優先順位」を決めるためのものです。
在宅を選ぶ場合でも、ショートステイなど“休む手段”を先に確保すると崩れにくいです。


まず押さえる:在宅介護と施設入所の「違い」

在宅介護のメリット

  • 住み慣れた環境で暮らせる(認知症の方ほど安心につながりやすい)
  • 訪問・通所・ショートなど、生活に合わせて組み立てやすい

在宅介護のデメリット

  • 夜間・緊急時の対応で家族が疲弊しやすい
  • 住宅改修・介護用品・おむつ等の保険外費用が積み上がりやすい
  • 医療的ケアが増えるほど、在宅の体制づくりが難しくなる

施設入所のメリット

  • 24時間の見守り体制が作りやすく、家族負担が大幅に減る
  • 医療・看護連携がある施設も多い(施設種別・体制で差あり)
  • レクリエーションや交流の機会が増えることも

施設入所のデメリット

  • 環境変化のストレス(自由度の制限も)
  • 費用が「介護保険分」だけでなく、居住費・食費などが上乗せされる
  • 特に特養などは地域によって待機が長くなりやすい

費用の基本ルール:まずここだけ覚えて

  • 介護保険サービスの自己負担は原則1割(一定以上所得で2割・3割
  • 在宅は「限度額」があり、超えた分は原則全額自己負担
  • 施設は介護保険分+居住費+食費+日常生活費が合算になる

在宅介護の費用目安:支給限度額(区分支給限度基準額)

在宅(居宅)サービスには、要介護度ごとに1か月に介護保険でカバーされる上限(支給限度額)があります。

限度額を超えたサービスを使うと、その超過分は原則全額自己負担です。

※注意:下の金額は「目安」です。実際は地域によって単価(地域区分)が異なるため、同じサービス量でも金額が少し変わります。

要介護度1ヶ月の支給限度額(目安)1割負担の自己負担“目安”
要支援150,320円5,032円
要支援2105,310円10,531円
要介護1167,650円16,765円
要介護2197,050円19,705円
要介護3270,480円27,048円
要介護4309,380円30,938円
要介護5362,170円36,217円

ここが落とし穴:「上限」だと思い込まない

上の表は「限度額の範囲内で使った場合の目安」です。実際は次が上乗せされます。

  • 限度額を超えた分(原則全額自己負担
  • 食費・日用品・おむつ代などの保険外費用
  • 別枠の上限がある制度(例:住宅改修、福祉用具購入)

関連:在宅の組み立てが迷子になりやすいので、サービスの全体像は先に見ておくと早いです。

介護サービスの種類と選び方|家族が迷わないためのガイド(初心者向け)


施設入所の費用目安:内訳を知ると判断しやすい

施設はざっくり言うと、次の合算です。

  1. 施設サービス費(介護保険)の自己負担(1〜3割)
  2. 居住費(部屋代)
  3. 食費
  4. 日常生活費(理美容、嗜好品、行事など)

低所得なら大きく変わる:負担限度額認定(補足給付)

施設やショートステイでは、要件を満たすと食費・居住費が軽減されます。これが「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」です。

該当するかどうかで月額は大きく変わるので、施設を検討し始めた段階で、自治体窓口に確認するのがおすすめです。

特養の月額:モデル例(あくまで目安)

※注意:地域区分・加算・部屋タイプ・負担限度額認定の有無で上下します。

  • 多床室(相部屋):10万円台〜
  • ユニット型個室:14万円台〜

後悔しない判断基準:この3つで条件分岐する

① 要介護度・認知症・医療ニーズ

特養(介護老人福祉施設)は原則要介護3以上が対象です。要介護1・2でも「やむを得ない事情」がある場合は特例入所が検討されます(判断は地域・施設の運用により違いが出ます)。

在宅が向きやすい目安

  • 要支援〜要介護2程度で、見守り・介助がサービスで回る
  • 医療的ケアが比較的少ない

施設を検討しやすい目安

  • 要介護3以上
  • 認知症が進行し、24時間の見守りが必須
  • 医療・看護の連携が常に必要(※施設種別・体制で受けられる範囲が変わります)

② 家族の介護力(ここを甘く見ると一気に詰む)

在宅が成立しやすい条件

  • 介護を1人で抱えない(分担・サービス導入・緊急時の導線がある)
  • 家の動線・転倒対策など、環境を整えられる

施設を検討すべきサイン

  • 介護者が高齢/持病/睡眠不足で限界
  • 仕事・育児との両立が崩れ、介護離職が見えている
  • 徘徊・転倒・夜間不穏など、安全面で在宅が危険域

③ 地域差(自治体差)は「供給」と「運用」に出る

介護保険は全国制度ですが、実際は地域によって次が変わります。

  • 訪問・通所・夜間対応など事業所の数
  • 施設の空き・待機
  • 特例入所などの具体運用(点数化の有無など)

だからこそ、ネットの一般論だけで決めず、早めに地域の窓口で“現実”を確認するのが安全です。


迷ったときの決め方(最短ルート)

  1. 地域包括支援センターに相談(状況整理・選択肢提示が早い)
  2. 必要なら介護保険担当窓口で申請・制度(負担限度額認定など)を確認
  3. 在宅ならサービスを仮組み(訪問・通所・ショート)→家族の負担が回るか検証
  4. 施設も並行検討(申込み・見学)→待機があるなら在宅と併用

関連:「介護の相談先、どこから行けばいい?」は、この記事が近道です。

介護の相談はどこから始める?地域包括・市役所・ケアマネの違いと、迷わない順番【栃木版】


まとめ:費用より先に「持続可能か」で決める

  • 在宅は、限度額内なら抑えやすいが、保険外費用と限度額超えで増えやすい
  • 施設は、居住費・食費が乗る分高くなりやすいが、負担限度額認定で差がつく
  • 最終判断は、本人の状態だけでなく「家族が倒れない設計」ができるか

よくある質問(FAQ)

Q1. 施設入所の待機期間はどれくらい?

A. 施設の種類・地域で大きく異なります。特養は待機が長い地域もあるため、複数申し込み+在宅サービス併用が現実的です。

Q2. 要介護度が低くても施設に入れますか?

A. 施設の種類によります。特養は原則要介護3以上ですが、要介護1・2でも「やむを得ない事情」がある場合は特例入所が検討されます。民間施設(有料老人ホーム等)は条件が異なります。

Q3. 在宅介護で費用が高額になった場合の軽減制度はありますか?

A. あります。自己負担が一定額を超えた分が払い戻される高額介護サービス費などがあります(対象範囲や申請要否があるため、自治体窓口で確認してください)。

Q4. 施設入所後に在宅へ戻ることはできますか?

A. 可能です。特に老健(介護老人保健施設)は在宅復帰を目指す性格があり、定期的に状態を評価しながら退所・継続を検討します。施設のケアマネ等と連携して準備します。

Q5. どこに相談すればいいですか?

A. まずは地域包括支援センターへ。状況整理と選択肢の提示が早いです。制度の申請や負担限度額認定は自治体の介護保険担当窓口で確認できます。


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参考(一次情報)